風営法ではキャバクラなどの社交飲食店の営業に関して”やってはいけない事”を規定しています。
法律で禁止されているということは、違反すると罰則があります。
法律には「○○円以下の罰金」や「○○年以下の懲役」などというように書かれていますがこれらの法律上の罰則以外にもう一つの罰則があります。
それは警察による行政処分である”営業停止”や”営業許可取消”です。
法律上の罰則を適用するには
警察が摘発→検察が認定→裁判所が判決
という手順が必要になるのに対し行政処分は
警察が摘発→警察が認定→警察が処分
というように警察のみで処分を行えるため、キャバクラなどの社交飲食店を営業している方とってはより現実的な問題となります。
この記事ではキャバクラなどの社交飲食店の営業に関してどのような行為が禁止され、どのような行政処分があるのか。
行政処分を受ける時には、どの程度の処分になるのかを解説していきます。
指示処分
警察ではキャバクラなどの社交飲食店の営業者が、営業停止や営業許可の取り消しに当るような行為をおこなったとしても、ただちに営業停止や営業許可の取り消しを行うのではなく、先ずは「これからは違反無く営業するように」という、指示処分を行う事としています。
ですので、違反行為の摘発を受けたとしても”指示処分”になる事が大半です。
しかし、以下の場合は指示処分ではなく営業停止や営業許可の取り消しを行ってもいいよとしているので油断してはいけません。
指示処分をせずに営業停止や営業許可の取り消しを行う可能性が有る場合は、下記の通りです。
①違反に関して裁判所で判決が出ている場合
②営業許可の条件に違反した場合
③指示処分にあたる行為を繰り返し、又は指導や警告に従わない場合
④指示処分の期間中に別の違反を行った場合
⑤罰則のある法律違反を行い書類送検された場合
⑥20日以上の営業停止命令の対象となる違反を行った場合
⑦その他、違反が悪質で善良な風俗・清浄な環境・青少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある重大な結果が生じた場合
違反が確定している①や警察の指導に従う意思の見られない②③④は論外ですが、⑤⑥⑦に関してはよほど悪質でなければ指示処分が行われことがほとんどです。
営業許可取消
警察がキャバクラなどの社交飲食店の営業許可を取り消すのは、以下の行為があった場合です。
①名義貸し禁止違反
他人名義の営業許可で営業を行っていた場合です。
②構造・設備の無承認変更、偽りその他不正な手段による変更に係る承認の取得
変更承認申請が必要な店内の構造変更を行ったにもかかわらず、変更承認申請を行っていなかった場合です。
許可基準に違反していて、許可が取れないような変更を行っていた場合は当然ですが、許可基準に適応するような変更であっても変更承認申請を行って承認を受けていないと対象になります。
店内の改装を行うときは必ず変更承認申請を行いましょう。
変更承認申請に関しては「変更承認と変更届」の記事を参照して下さい。
③年少者接待業務従業禁止違反・年少者接客業務従業禁止違反
「18歳未満を接待業務を行うホストやホステスなどとして働かせた場合」と「18歳未満を22時以降にお客に接することのあるウエイターやウエイトレスとして働かせた場合」が対象になります。
お客さんたちは若い子が大好きですが、未成年を雇うときにはくれぐれも気をつけましょう。
未成年の雇用に関しては「未成年を雇いたい」の記事を参照して下さい。
④雇用してはいけない外国人を雇っていた場合
風営法には規定されていませんが、出入国管理及び難民認定法という法律でキャバクラなどの社交飲食店では就労資格のない外国人を雇ってはいけません。
キャバクラなどの社交飲食店で就労する資格があるのは
a.永住者(特別永住者を含む)
b.日本人の配偶者等
c.永住者の配偶者等
d.定住者
だけですから注意しましょう。
外国人の雇用に関しては「外国人を雇いたい」の記事を参照して下さい。
外人パブなどでは多くの外国人の女の子が働いていますが、仮に全員が合法的に働いているとすると、外人パブの女の子たちはみんな日本人と結婚しているか日本生まれのハーフという事になります。
⑤営業停止命令違反
営業停止命令に違反して営業を行っていた場合です。
⑥1年間に2ヶ月以上の営業停止命令を受けたのち、同じ違反を行ったとき
度重なる違反は取消の対象となります。
⑦営業者又は法人の役員が欠格事項に該当するようになった場合
社交飲食店の営業許可取得後に営業者又は法人の役員が欠格事項に該当するようになった場合は、そもそも社交飲食店の営業許可を受ける資格を失いますから、社交飲食店の営業許可は取り消されます。
お店の営業とは関係なかったとしても法律に違反して懲役刑を受けたり、破産をしたり、認知症などで後見開始の審判を受けた場合などが対象になります。
ただし、対象が法人の役員だった場合はただちに役員の解任や変更を行えば、取消は免れることができます。
法人の役員の誰かが逮捕されたという連絡があったら、いつでも役員を解任できるように準備しておきましょう。
営業者が法人で複数の店舗を経営しているときに、これらを理由に1つの店舗で社交員飲食店の営業許可が取り消された場合、その法人の役員は欠格事項の1つである「許可の取り消しを受けて5年を経たない者」に該当する事になります。
その場合、他の全ての店舗が⑦を理由に営業許可取消の対象になってしまいます。
神奈川県警に問い合わせたところ「そのような場合は営業許可の返納を指導する」との回答を頂いておりますので、くれぐれも営業許可の取り消しを受ける事のないように営業を行いましょう。
営業停止
警察が営業停止処分を行う対象は100近くにわたります、ここではお店の営業に関する行為の中で代表的な物を紹介していきましょう。
各違反には何カ月から何ヶ月という営業停止期間の他に、通常課される営業停止の基準期間が定められているので合わせて記載しておきます。
①営業時間制限違反
処分:20日以上6ヶ月以下の営業停止 基準:40日
深夜営業を行っていた場合です。
②客引き禁止違反・客引き準備行為禁止違反
処分:40日以上6ヶ月以下の営業停止 基準:3ヶ月
客引き及び客引きを行うためにつきまといを行った場合です。
③年少者の立ち入らせ禁止違反
処分:20日以上6ヶ月以下の営業停止 基準:40日
18歳未満の者を「お客として」営業所に立ち入らせてはいけません。
④未成年に対する酒類・たばこ提供禁止違反
処分:20日以上6ヶ月以下の営業停止 基準:40日
お客であっても従業員であっても20歳未満に酒類・煙草を提供してはいけません。
”提供”というのはお酒やたばこを販売する事だけではなく、20歳未満にグラスや灰皿を用意するなどお酒を飲んだりたばこを吸ったりする環境を提供する事も”提供”にあたり、違反になります。
⑤従業員名簿備付け記載義務違反
⑥接客従業員の生年月日等の確認義務違反
⑦接客従業員の生年月日等の確認記録保存義務違反
処分:10日以上80日以下の営業停止 基準:20日
⑤~⑦はいわゆる従業員名簿の不備に関する違反です。
キャバクラなどの社交飲食店では全ての従業員の従業員名簿を用意し、必要事項を確認し、記載し、保管しなければいけません。
従業員名簿の規定については「従業員名簿」の記事を参照して下さい。
従業員名簿に関する違反は警察が気軽に?摘発できる事項ですから、お店には確実に従業員名簿を用意しておきましょう。