キャバクラを営業するためには、警察(公安委員会)から社交飲食店の営業許可という許可を受ける必要が有ります。
もし、この許可を受けずに営業を行うと2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金という重い処罰が待っています。
また、お店を情報誌や求人誌に掲載するためには営業許可証が必要なことが多いですから、キャバクラを営業するときは必ず社交飲食店の営業許可を受けて営業するようにしましょう。
今回はキャバクラなどの社交飲食店の営業許可を受けるにはどうすればいいのか、実際の流れを追って解説していきます。
①確認事項を確認
キャバクラなどの社交飲食店の営業許可を取るには
1.人の確認
2.お店の場所の確認
3.お店の造りの確認
が必要なので、順番に確認しましょう。
1.人の確認
社交飲食店を開店しようとしている申請者・申請者が法人なら全ての役員・お店の管理者の誰か一人でも風営法で定める欠格事項に該当していると営業許可は取れません。
まずは関係者が以下の欠格事項に該当しないかを確認しましょう。
・被成年後見人・被保佐人
・破産者で復権していない
・1年以上の懲役または禁固の刑を受けて、刑が終了してから5年経過していない
・特定の罪で1年未満の懲役または禁錮、又は罰金刑を受けて5年を経過していない
・集団的又は常習的に暴力行為を行う恐れがある
・薬物及びアルコール中毒者
・過去に社交飲食店の営業許可の取り消しを受けて5年を経過していない
・未成年者
それぞれの詳しい解説は「人的要件の確認」の記事で解説してありますので、そちらを参考にして下さい。
関係者に該当する人がいるなら別の人を探すか、法人の役員なら役員から外す手続きを行いましょう。
もし、あなた自身が該当するようなら社交飲食店の営業許可を受けることはここで諦めて下さい。
2.お店の場所の確認
関わっている「人」に問題が無ければ、次はお店の立地を確認します。
「以前のテナントが許可を取っている」
「周りに同じような店が多くある」
だから、許可が取れる!
とは限りません。
以前は許可が取れたけれども、今は取れない地域かもしれません。
周りの店は許可が取れたとしても、店の場所が1m違うだけで許可が取れなくなります。
必ず事前に確認をしましょう。
確認しないといけない「場所」と言うのは、お店の有る地域が何の「用途地域」かです。
お店を出す都道府県によって多少変わってきますが、基本的には”商業地域”であればどの都道府県でもキャバクラなどの社交飲食店の営業許可を取ることが出来ます。
お店の住所がある自治体に、その住所が何の「用途地域」に当たるか問い合わせましょう。
電話でも答えてもらえますし、自治体によってはインターネットでも検索可能です。
用途地域が社交飲食店の営業許可の取れる地域だったら、次は保全対象施設の確認です。
風営法では学校や病院の周りは、キャバクラなど社交飲食店が営業するには相応しくないとして出店を規制していますが、その詳細は都道府県の条例で決められています。
保全対象施設がお店の規定距離内にあった場合、絶対にキャバクラなどの社交飲食店の営業許可は取れません。
お店の賃貸契約を済ます前にしっかりと確認しておかないと、契約してお金を払ったけど許可が取れなくて開店できない・・・なんて事になりかねません。
3.お店の造りの確認
お店の場所にも問題が無いようなら、次はお店の造りを確認します。
お店の造りが風営法の規制に抵触していると、キャバクラなどの社交飲食店の営業許可は取れません。
「居抜で借りるから大丈夫!」
残念ながら違います。
以前のテナントは社交飲食店の営業許可を取った後に、違法な改装をしているかもしれません。
そもそも社交飲食店の営業許可を取っていないかもしれません。
キャバクラなどの社交飲食店が対象になる構造上の規制は以下の7つです。
①客室が2以上有る場合、1つの客室面積は16.5㎡(和室は9.5)以上なければいけない。
②客室が営業所の外から見えてはいけない。
③客室の内部に見通しを妨げるものが有ってはいけない。
④卑猥な又は射幸心を煽る写真や広告、装飾その他をおいてはいけない。
⑤客室の出入り口に鍵を付けてはいけない。
⑥営業所内の照度が5ルクス以上なければいけない。
⑦騒音・振動の程度を規定以下に抑えなければいけない。
この中でよく問題になるのが①と③と⑥です。
①は許可を取った後に、壁などを造作してVIPルームを作っている事が有ります。
③は1m以下の腰壁に、ガラスなどで間仕切りを追加して1m以上にしている事が有ります。
これらの場合は壁や間仕切りを取り払わなければ、営業許可は取れません。
⑥は許可を取った後に風営法では認められない「照度の基準に満たない照度に自由に変えられるスライダックス」が設置されている事が有ります。
スライダックスというのはメモリを調整することで、照明の電圧を上下させ、明るさを変えられる装置のことです。
この場合は「照度の基準に満たない照度に自由に変えられない」設備に変更する必要が有ります。
以上で確認は終わりです。
お店は社交飲食店の営業許可が取れそうですか?
確認の結果、社交飲食店の営業許可が取れそうなら、次は申請に必要な書類を用意していきましょう。
②申請に必要な書類の用意
社交飲食店の営業許可申請の必要書類について解説していきます。
1.人(法人)に関する書類
キャバクラなどの社交飲食店を開店しようとしている申請者・申請者が法人なら全ての役員・お店の管理者の書類を揃えましょう。
本籍地記載の住民票
とてもなじみの有る書類です。
住所地の市役所・区役所などで取得します。
必ず「本籍地」を記載するのを忘れないようにしましょう。
身分証明書
とてもなじみが有るようで、実はなじみの無い書類です。
免許証などの身分証明証とは違います。
成年被後見人・被保佐人・破産者でないことを証明するための書類で、本籍地の役所で取得するものです。
本籍地でしか発行されないので、地方の実家などに本籍がある場合は実家に頼んで送ってもらうか、市役所・区役所などに郵送で請求するしかありません。
郵送の場合は最短でも1週間程度は時間がかかってしまうので、注意しましょう。
法人の定款
申請者が法人の場合は法人の定款の写しを用意しましょう。
定款の末尾には用意した日付と代表者の記名をして社印を押印します。
法人の履歴事項証明書
会社の謄本と呼ばれる書類で全国の法務局で取得出来ます。
この書類の「目的」欄に「ナイトクラブ経営」など、キャバクラなど社交飲食店の経営に当たる項目がないと営業許可を申請できません。
記載が無い場合は登記の変更が必要です。
また、履歴事項証明書には役員の住所も記載されていますが、この役員の住所が住民票の住所と違っている場合も住民票の住所と同じになるよう、登記の変更が必要になるので気をつけましょう。
登記の変更が必要になった場合は、変更手続きが完了するまで社交飲食店の営業許可を申請することは出来ません。
誓約書
申請者・申請者が法人なら全ての役員の「欠格事項に当らない事の誓約書」お店の管理者の「欠格事項に当らない事の誓約書」「業務を誠実に行う事の誓約書」をそれぞれ用意します。
誓約書の署名欄は必ず自筆で記名し、印鑑は社印ではなくて個人印を捺印するように気を付けて下さい。
誓約書はこちらでダウンロードできます。
https://www.police.pref.kanagawa.jp/index10.htm
このページは神奈川県警ですが、全国で利用可能です。
管理者の写真
お店の管理者になる人の顔写真です。
スピード写真などで2.4cm×3.0cmの証明写真を撮影し、写真の裏に店名・名前・撮影日を書いたものを2枚用意します。
1枚は許可が出た際に発行される管理者証に貼られ、1枚は警察署に保管されます。
2.お店の所在地と建物に関する書類
次はお店の入るビルやビルの有る地域に関する書類を集めます。
建物の履歴事項証明書
お店が入るビルの謄本で、全国の法務局で取得することができます。
ただし、ビルの情報は○○○ビルといったビルの名前では登録されていないうえ、住所ではなく、地番と建物番号で管理されているので、間違って違うビルの謄本を取らないように気を付けましょう。
同じような雑居ビルが林立しているような地域では意外と大変です。
この書類で建物の構造と所有者の情報を確認することができます。
使用承諾書
建物の謄本で確認した建物所有者からもらう書類で、キャバクラなどの社交飲食店の営業を行う事を建物所有者が承諾する書類です。
普段からキャバクラなど社交飲食店に賃貸している物件の場合、問題なく発行してくれるはずです。
契約書
賃貸契約の契約書のコピーです。
契約書の内容にキャバクラなどの社交飲食店を禁止する旨の規定などが無いかを確認されます。
周囲の略図
お店を中心とした半径100m(1/1000)の地図です。
地図にはお店を中心に、保全対象施設との距離に関わる半径の円をそれぞれ記入して、周囲の保全対象施設と認可外保育園や入院施設の無い診療所などの、保全対象施設ではないが注意が必要な施設を書き込んで、各施設の住所とお店からの距離を記載します。
さらに、地図を用途地域ごとに色分けしましょう。
3.お店の営業内容に関する書類
・料金表
・メニュー表
どちらも申請時点でははっきり決まっていないと思いますが、とりあえずの物が必要です。
あまりおかしな料金設定でなければ指摘を受けることも有りませんし、エクセルやワードなどで作った簡単なもので構いません。
4.お店の造りに関する書類
お店の造りに関する図面を用意します。
お店が構造上の規定に違反していないことを示すための書類ですから、不動産屋の間取り図程度の図面ではいけません。
まずはレーダー距離計とメジャーを用意してお店を隅から隅まで測量していきましょう。
測量結果をもとに以下の図面を作っていきます。
①営業所面積求積図
お店の入り口からバックヤードまでを含めた、お店が管理する範囲がどこからどこまでで、その面積が何㎡有るのかを示した図面です。
②客室面積求積図
お店の中で、お客さんが飲食や遊びに利用する部分の面積が何㎡有るのかを示した図面です。
お客さんが利用する部分であっても「トイレ」・「通路」などは含みません。
③音響照明防音設備図
店内の全ての照明、照明のスイッチ、スピーカーやカラオケなどの音響機器、周囲への騒音を抑えるための防音設備を示した図面です。
照明やスピーカーなどは何(ハロゲンライト・白熱灯など)で・何ワットの出力が有って・店内にいくつあるのかを記入したリストも用意します。
④平面図
店内の全ての家具や間仕切り、カウンターなどを示した図面です。
店内に有る全ての椅子・ソファー・テーブル・ボトル棚などの家具類はもちろんトイレ・調理場の設備なども正確に記載します。
別に②で客室とした範囲に有る家具類は寸法や個数などをまとめたリストを用意します。
図面の詳しい作り方は「図面を作る」の記事を参考にして下さい。
5.申請書
ここまでそろえたら書類の情報をもとに申請書を書きましょう。
申請書は全国共通で、警視庁のHPからダウンロードした物が利用できます。
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/tetsuzuki/fuzoku/shinsei_fuei.html
6.保健所の飲食店営業許可証のコピー
社交飲食店の営業許可の申請の際は、先に保健所から飲食店の営業許可を受けている事が必要です。
許可証はコピーを用意して添付します。
これで必要書類は全てそろいました。
揃えた書類は1つにまとめますが、ホチキスなどでは止めずにクリップなどでファイルしましょう。
次はいよいよ警察へ申請です。
③警察へ営業許可の申請
キャバクラなどの社交飲食店の営業許可を管理しているのは各都道府県の公安委員会という組織ですが、その受付はお店のある地域を管轄する警察署が行います。
なので、申請書を持って向かう先は管轄の警察署、そのなかの生活安全課という部署になります。
ただし、いきなり行ってはいけません。
社交飲食店の許可申請は書類の量も多く、受付の際に確認しないといけない事も多いので、警察の担当者も時間の調整が必要になります。
管轄の警察署へ電話して「社交飲食店の受付担当の方をお願いします」と伝えれば、担当者につないでもらえますから、社交飲食店の許可申請をしたい旨を伝えてアポイントをとってから行くようにしましょう。
警察署へ申請に行くと、専門の担当者がいますのでその方に申請書を提出します。
担当者の方がその場で書類の中身を精査して
・必要書類は全て揃っているか
・住所などの記載に矛盾が無いか
・お店の構造に問題は無いか
・図面の数値と面積の計算に問題が無いか
などを隅から隅までチェクして、提出した書類に不備が有ると受け付けてもらえません。
その場合は後日再提出となるので、その分だけお店のオープンは伸びることになります。
その場で修正可能なものであれば、すぐ修正できるように必ず訂正印を持参しておきましょう。
提出した書類に不備が無ければ申請手数料を支払って受付完了です。
「申請書を受付してもらった日」から55日が許可の出る目安になるので、この時点でようやくオープン日の目処が立つことになります。
受付が済むと、次は実際にお店の検査を行う日時を決めることになります。
お店の検査は警察のOBである風俗浄化協会という組織の方が行いますが
・受付した時点で警察の担当者が浄化協会に連絡を入れ、検査日時を決定する。
・後日浄化協会から連絡が入り、検査日時を決定する。
という2つのパターンが有ります。
どちらの場合も申請者の都合を考慮してくれますから、無理のない日時を希望しましょう。
これで、警察署での申請は完了です。
あとは浄化協会の検査をクリアできれば、いよいよ社交飲食店の営業許可を受けてお店をオープンすることができます。
④風俗浄化協会による店内の検査
風俗浄化協会による店内の検査の流れをご紹介します。
1.検査までの準備
検査日は申請日から1週間以上先になる事が多いですが、それまでに準備しておかなければいけないことが有ります。
1.営業できる状態にする
申請書を出した段階では壁紙が貼り終わっていなかったり、家具やカラオケ機材が搬入前だったりすることもあるかもしれませんが、検査が行われる時には全て揃っていないといけません。
検査時に店内が未完成だと、検査のやり直しとなって55日という許可の目処もそこでストップすることになります。
2.料金の掲示
店内に申請の際に提出した料金表を掲示します。
A4の紙に印刷して、店内の目立つ場所に貼っておきましょう。
3.18歳未満入店禁止の掲示
店頭に18歳未満入店禁止の掲示をしておきます。
通信販売でプラスチック製の物が売っているのでそれを購入するか、自分で印刷した物の場合は、最低限ラミネート加工をしておきましょう。
4.店名の掲示
検査の段階では看板などはまだ出来ていないかもしれませんが、印刷した物で構わないので店頭に店名が入った物を掲示しておかなければいけません。
「店名表示が無いから検査する店がここかどうかわからない」
といって帰ろうとした浄化協会の方が実際にいらっしゃいます。
5.深夜に営業所の周辺で迷惑行為を行わないよう注意書の掲示
深夜0時以降も営業をする場合、深夜0時以降に店の周囲で迷惑行為を行わないように注意を促す張り紙の掲示が必要です。
2.検査当日
検査の当日は検査予定時間の1時間前には店内で待機して、浄化協会の方が到着するまでの間に
1.家具などの配置が提出した平面図と同じか。
2.切れている照明が無いか。
3.腰壁や棚など1m以下でないといけない物の上に物が置かれていないか。
4.必要な掲示物が掲示されているか
などを確認して、問題が有れば直ちに対応しましょう。
3.検査中
浄化協会の方が到着するといよいよ検査の開始です。
浄化協会の方はレーダー距離計や照度計を使って
・店内の造り
・家具の種類と寸法と数
・照明の数と種類
・店内の明るさ
・店内の寸法
などを検査し、法律上の問題が無いか、図面と違わないかを確認していきます。
検査中は必ず控えの図面を用意して浄化協会の方と一緒に回り、質問や是正の指示にはすぐに対応できるようにしましょう。
その場で是正できる内容は、ただちに是正すれば許してもらえます。
細かな図面の差異などは、後日に訂正した図面を提出することで許してもらえます。
大きな問題が無ければ検査自体は30分程度で終了となります。
検査の最中に特段問題を指摘されなかったなら、ほぼ許可になると考えて構いません。
あとは警察署から「許可が下りた」という連絡が来るのを待つだけです。
申請書を受理してもらった日から55日前後で警察署から電話で「許可が下りた」ことと「許可番号」を告げられます。
許可証の発行は後日になりますが、営業はこの瞬間から可能です。
まとめ
以上でキャバクラなどの社交飲食店の営業許可を取得するまでの解説は終了です。
思ったより簡単でしたか?
それとも思ったより難しかったですか?
それとも「めんどくさい」でしょうか?
飲食店の開業・開店にはやるべきことが山のように有ります。
「自分でやれることは自分でやる」ことはもちろん大事ですが
「他人に任せられることは他人に任せる」ことも大事です。
専門家に依頼するときには早めの対応を心がけましょう。