ガールズバー、スナック、パブ、ダーツバーその他名称に関わらず
・お酒をメインで提供し
・接待は行わず
・深夜0時以降も営業するお店
については、警察(公安委員会)に対して深夜酒類提供飲食店の営業開始の届出をしなければいけません。
接待の基準は?という点に関しては「キャバクラとガールズバーの違い」の記事を参照して下さい。
この記事では、ガールズバーなどの深夜酒類提供飲食店の届出を行う手順を具体的に解説していきます。
ガールズバーの営業許可の確認事項
ガールズバーなどの深夜酒類提供飲食店を営業するには、
1.お店の場所の確認
2.お店の造りの確認
が必要になるので、順番に確認をしましょう。
①ガールズバーのお店の場所の確認
「以前のテナントと同じ業種だから大丈夫」や「周りに同じような店が有るから大丈夫」とは、限りません。
以前のテナントは深夜酒類提供飲食店の届出をしていなかったかもしれません。
周りの店は深夜酒類提供飲食店の営業できる地域だったとしても、路地1本隔てたあなたのお店は営業が認められない地域かもしれません。
必ず事前に確認しましょう。
確認しないといけない場所と言うのはお店の有る地域が何の用途地域かです。
お店を出す都道府県によって多少変わってきますが基本的には住居地域以外であればどの都道府県でもガールズバーなどの深夜酒類提供飲食店を営業することが出来ます。
お店がガールズバーなどの深夜酒類提供飲食店の営業が出来ない地域に有った場合、深夜0時以降に営業することは出来ません。
お店の賃貸契約を済ます前にしっかりと場所の確認をしておかないと、契約してお店も出来たけど深夜0時には閉店しないといけない…なんて事になりかねません。
②ガールズバーのお店の造りの確認
お店の場所に問題がなければ、次はお店の造りを確認します。
お店の造りが風営法の規制に抵触していると、ガールズバーなど深夜酒類提供飲食店の届出は受理されません。
「居抜で借りるから大丈夫」と思っている方もいるかもしれませんが、残念ながら違います。
以前のテナントは深夜酒類提供飲食店の届出をしていなかったかもしれません。
あるいは、届け出をした後に規定に抵触するような改装をしているかもしれません。
ここでは特に問題になる決まりを解説します。
1.客室が2以上有る場合は1つの客室の面積は9.5㎡以上なければいけない。
カウンターだけの小さなお店など、客室が1室だけのお店は何㎡でも問題有りませんが
店内に個室を作ろうとした場合はその個室の面積が9.5㎡以上有る必要が有ります。
2.客室の内部に見通しを妨げる設備を設けてはいけない。
「見通しを妨げる設備」とは、高さが概ね1mを越える物です。
種類に制限はなく「パーテーション」「観葉植物」「背の高い椅子」「照明器具」など何であっても1mを越えてはいけません。
3.店内の照度(明るさ)が20ルクス以上なければいけない。
20ルクスを下回るような照度のお店は、かなり暗いお店になりますから
通常の明るさならまず問題はありません。
不安な場合は照度計を用意して、店内の照度が20ルクス以上有るか計ってみましょう。
以上で確認はおしまいです。
お店は深夜酒類提供飲食店としての営業が出来そうですか?
確認事項に問題が無さそうなら、次は必要書類の用意をしていきましょう。
ガールズバーの営業許可の書類準備
ガールズバーの営業許可に必要な書類準備について、解説していきます。
1.住民票と謄本
個人で営業する場合は代表者の「本籍地」が記載された住民票、法人で営業する場合は法人の謄本と法人の「役員全員」の「本籍地」が記載された住民票が必要になるので用意しましょう。
代表者又は法人の役員に外国籍の人がいる場合は「国籍」「在留資格」などの全ての情報を記載した住民票とその人の在留カードを用意しましょう。
2.お店の図面を作る
お店の構造に関する図面を用意します。
店が構造上の規定に違反していないことを示すための書類ですから、不動産屋の間取り図程度の図面ではいけません。
まずはレーダー距離計とメジャーを用意してお店を隅から隅まで測量していきましょう。
測量結果をもとに以下の図面を作っていきます。
①営業所面積求積図
お店の入り口からバックヤードまでを含めた、お店が管理する範囲がどこからどこまでで、その面積が何㎡有るのかを示した図面です。
②客室面積求積図
お店の中で、お客さんが飲食や遊びに利用する部分の面積が何㎡有るのかを示した図面です。
お客さんが利用する部分であっても「トイレ」・「通路」などは含みません。
③音響照明防音設備図
店内の全ての照明、照明のスイッチ、スピーカーやカラオケなどの音響機器、周囲への騒音を抑えるための防音設備を示した図面です。
照明やスピーカーなどは、何(ハロゲンライト・白熱灯など)で・何ワットの出力が有って・店内にいくつあるのかを記入したリストも用意します。
④平面図
店内の全ての家具や間仕切り、カウンターなどを示した図面です。
店内に有る全ての椅子・ソファー・テーブル・ボトル棚などの家具類はもちろん、トイレ・調理場の設備なども正確に記載します。
さらに、②で客室とした範囲に有る家具類は寸法や個数などをまとめたリストを用意します。
3.用途地域の記載があるお店周辺の地図
深夜酒類提供飲食店は住居専用地域などでは営業が禁止されているので、お店が営業禁止の地域に無いことを証明するための地図です。
お店周辺の地図を用途地域ごとに色分けして、お店の場所にマークを入れましょう。
提出する警察署によっては役所が発行する「用途地域証明書」の提出を求められることも有ります。
4.営業開始届
所定の届出書に必要事項を記入します。
届出書は警視庁のホームページでダウンロードすることが出来るので、入手しておいて下さい。
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/tetsuzuki/fuzoku/style/style1.html
この届出書は「届出書」と「営業の方法」という2種類の書類になりますが、「営業の方法」に罠が有ります。
「営業の方法」の記入欄の中に「客に遊興をさせる場合はその内容及び時間帯」という欄が有りますが、お店にカラオケやダーツなどを置いて、お客さんに遊ばせる場合はなんと書けばいいでしょうか?
”カラオケを使わせます、時間はオープンの18時から閉店の午前2時までです”
”ダーツで遊ばせます、時間はオープンの19時から閉店の午前5時までです”
と書いた場合、残念ながらこの届出は受理されません。
実は、深夜0時以降にお客さんに「遊興をさせる」ことは風営法で禁止されているんです。
深夜0時以降に「遊興をさせる」ためには特定遊興飲食店という深夜酒類提供飲食店とは別の許可を申請する必要が有りますが、その許可条件はかなり厳しいので現実的ではありません。
なので、ここには「何も書かない」又は遊興させる時間帯を「午前0時まで」と書かなくてはいけません。
嘘をつくわけではありません。
詳しくは「遊興をさせるって?」の記事でも解説していますが”遊興をさせる”と言うのは遊ばせるとは意味が違います。
お店ではカラオケやダーツで遊ばせはするけれども遊興をさせなければ書く必要が無いのです。
実際の申請の際にはワザトなのかはわかりませんが、担当の警察官から「カラオケ有るならここに書いてね」と言われますが遊興はさせないので書きませんときっぱり断りましょう。
5.飲食店の営業許可証
ガールズバーなどの深夜酒類提供飲食店の届出の際は、先に飲食店の営業許可を受けている事が必要です。
飲食店の営業許可については「飲食店の営業許可をとろう」の記事を確認して下さい。
許可証はコピーを用意して添付します。
以上で必要書類の準備は完了です。
必要書類が揃ったら警察へ深夜酒類提供飲食店の営業開始届けを提出しましょう。
警察へ届出
ガールズバーなどの深夜酒類提供飲食店の届出先は、お店の地域を管轄する警察署の生活安全課です。
必要書類を用意して、警察署へ向かいましょう。
警察署の受付で要件を伝えれば、生活安全課への行き方を丁寧に教えてもらえます。
ただし、警察署によっては事前の予約が無いと受け付けてくれない署も有るので、一度電話で問い合わせをしておくことをお勧めします。
予約の形も、
・「何日の何時」と指定出来る警察署
・「今日の何時に行っていいですか?」と当日でないと対応してくれない警察署
など様々です。
生活安全課の担当者に書類を提出すると、
・全ての書類が揃っているか
・書類の内容に不備がないか
・お店の設備や構造に問題はないか
などを細かくチェックされます。
このときにカラオケやダーツなどの「遊興をさせる」話をされるので、しっかりと対応しましょう。
もしも書類に問題が有ればその日は不受理となり、後日訂正して再提出となってしまいます。
そうなると、お店が深夜0時以降に営業できるようになる日取りも遅くなってしまうので、書類の用意は慎重に行いましょう。
営業開始
無事に深夜酒類提供飲食店の届出が受理されると、いよいよ営業開始ですが、すぐに営業してはいけません。
風営法では「深夜酒類提供飲食店は営業開始する10日前までに営業開始届けを提出すること」となっています。
逆に言えば、届け出を行った10日後まで営業してはいけません。
この計算には届出を行った当日を含むので、
8月1日に届出→8月10日から営業可能
となります。
届け出の際に「いつから営業しますか?」
という質問を受けることがありますが、間違っても「もう営業しています」なんて答えてはいけません。
「10日後以降から営業します」が模範回答です。
既に営業している場合は「営業はしていますが、深夜の営業は10日後から始めます」でもかまいません。
無事に届け出が済めば、警察からの通知やお店の検査などは有りませんから、届け出をした日の10日後から深夜の営業を開始して下さい。
まとめ
以上で深夜酒類提供飲食店の届出を行うための解説は終了です。
思ったより簡単でしたか?
それとも思ったより難しかったですか?
それとも「めんどくさい」でしょうか?
飲食店の開業・開店にはやるべきことが山のように有ります。
「自分でやれることは自分でやる」ことはもちろん大事ですが、「他人に任せられることは他人に任せる」ことも大事です。
専門家に依頼するときには早めの対応を心がけましょう。